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【増戸牧場 増戸さん】理想は次世代に受け継がれる「楽しい酪農」

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年2月1日
増戸牧場増戸さんの写真

酪農が盛んなまち 袖ケ浦

増戸牧場増戸さんの写真

 実は千葉県って、酪農発祥の地なんです。そんな中でも袖ケ浦は酪農が盛んなまち。増戸牧場は、市内に約30ある酪農農家の1軒で、家族と新人スタッフ、外国人技能実習生の5人が働いています。牧場には約200頭の牛がいて、ほとんどが生乳を出荷するために飼育しています。組合をとおして出荷された後は、大手メーカーから牛乳として供給されます。首都圏の大消費地に近いことは袖ケ浦の優位性の1つ。アクセスと自然環境に恵まれた土地で酪農を営んでいます。

 酪農の仕事は朝が早く、5時から搾乳と餌作り、給餌から始まります。合間に牛舎の掃除をしたり、堆肥を車で運んだりもします。種付の繁殖管理や3日に一度はあるお産の立会いも大事な仕事です。牛はなるべくストレスをかけないように育てることを重視しています。牛舎の中で放し飼いをしていますが、餌を食べず奥でうずくまっていると体調が悪い可能性があるので、そうした行動も見逃せません。一番の大敵は夏場の暑さ。空調管理や水浴び、餌に水分を混ぜる工夫もしています。

循環型農業で米農家にも酪農家にもメリット

飼料用稲の刈り取り写真ホールクロップサイレージの写真

 袖ケ浦市が早くから取り組んでいるのが、耕畜連携の循環型農業です。牛ふんの堆肥で土づくりをした田んぼで飼料用の稲を育て、それを牛が食べることで循環するしくみをつくっています。このしくみは、環境面以外にも双方の農家にメリットがあり、米農家にとっては刈り取り等の手間が省け、助成金で安定的に収益が見込めます。一方、酪農家にとって牛ふんの処理は費用も手間もかかる悩みの種。それを堆肥として有効活用できるのはとてもありがたいことなんです。

 また、稲は実と茎葉を発酵させてホールクロップサイレージにすることで、嗜好性も良く、消化や栄養にも優れた飼料になります。自分たちの地域で作れる分、価格も安定しているので、現在では飼料全体の3分の1から4分の1程度を利用しています。市内の酪農家仲間と堆肥会社をつくり、米農家や行政と連携しながら取り組んでおり、来年からは飼料用稲の収穫量を増やすためにインセンティブを加える方法を話しあっている最中です。地域で協力しながら、さらに面積を増やして取り組みたいと思っています。

増戸牧場の牛の写真

台風被害をバネにみんなでできる酪農を

 酪農をやっていて一番のよろこびは、頑張った分だけ牛たちが応えてくれることです。牛が寝るベッドを快適にして水槽もまめに掃除すれば、乳量も増えていきます。ある程度まで乳量が増えるとそこから上昇させるのは難しいですが、それでも増えてくると頑張ってくれたんだなと思います。逆に、牛の数が増えたからと慢心していると、牛の体調が悪くなったことに気づかず、大切な牛を病気で亡くしてしまうこともあります。自分たちがきちんとやることで牛の能力が上がっていくんです。うちの牛には名前の冠としてMust Do(やらねばならぬ)と付けています。これは増戸にかけた名前ですが、私たちの方針でもあります。

 今年の秋に上陸した台風では牛舎の屋根が飛ぶなど、大きな被害が出ました。でも立ち止まってはいられません。元々、牛舎を大きくしようという計画もあったので、これを機にどうやって再建するか計画を立てている最中です。私の理想は、子ども世代に継ぎたいと思ってもらえる酪農。私自身、両親の姿を見て酪農をやりたいと思ったからです。実は、高校生の息子が酪農をやりたいと宣言してくれたんです。娘も酪農に興味があるようですし、10年20年を見越した計画を立てて、みんなで一緒にできる酪農を目指していきたいと思います。

取材日 2019年12月9日
interview&text by Okamoto Nozomi
photo by Okada Keizo(インタビュー写真)

増戸牧場の写真
増戸牧場の写真
増戸牧場の写真
増戸牧場の写真