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【遠藤園芸 遠藤さん】色鮮やかな花々を袖ケ浦から届けたい

内房の温暖な気候のなかで、花を育てています

12月になると、お花屋さんの店先には色鮮やかなシクラメンが並びます。私は、冬の窓辺を明るくするシクラメンを中心に栽培する園芸農家の2代目です。シクラメンは種まきから出荷まで1年を要するため、年間を通じて栽培に取り組みます。その合間に、デイジーやアサガオ、ペチュニアなどポットの花壇苗も育てています。
現在、遠藤園芸では約20種類のシクラメンを育てています。ピンクや赤の明るい色あいを中心に、変わり種の品種も。万寿咲きといって真ん丸に咲く珍しいシクラメンもあります。出荷のメインとなる東京の市場では、住宅事情もありミニシクラメンやガーデンシクラメンといった小型のシクラメンの需要が多くなっています。ガーデンシクラメンは、寄せ植えもできるのが人気の理由。小さなベランダや庭先であっても、シクラメンを飾ると華やかに彩ることができます。
長持ちする品質の高いシクラメンを育てていきたい

袖ケ浦では、昔からミニシクラメンの栽培がさかんです。というのも、実は私の父の世代のシクラメン農家が大手園芸メーカー向けの育種にも携わっていたから。ミニシクラメンの育種は、当時全国でも珍しかったそうです。ミニシクラメンは、ヨーロッパの原種に近く、大きいものよりも病気に強い品種です。自分たちの父親たちが工夫しながら取り組んできたシクラメンの栽培に、私も現在試行錯誤しながら取り組んでいます。
朝、起きてすべての花に水やりをするのが1日の始まりです。夜更かしした翌日も、朝5時には目が覚めてしまいますね(笑)。良質で長持ちするシクラメンを育てるためには、時期によってポイントをおさえた作業が必要です。一番は、暑い夏をどう越すか。植物は根を大事にすることが基本なので、栄養分に気をつかい、根がしっかりと育つようにしています。
評価の高いシクラメンを育てるために大切なのは手間ひまを惜しまないこと。病気を防ぐために蒸気で土を消毒し、夏過ぎからは葉組みの作業も手を抜けません。シクラメンは、東京の大田市場への出荷がメインですが、市場で評価される高品質なシクラメン農家でありたいと思います。
市場へ好アクセスな袖ケ浦は園芸農家にとっても魅力的なまち
千葉県は、切り花や鉢花の生産がさかんです。県の鉢花の研究会もあるので、栽培でうまくいかないときは、そこに知恵を借りることもあります。袖ケ浦は、県北にくらべて冬でも温暖な気候のため、花々の生育に向いています。また、東京の大田市場までアクアラインですぐに出荷できるので、そのメリットも大きいですね。袖ケ浦は鉢花園芸を営む場所として、さまざまな面で恵まれているので、外房や南房総など県内のほかの地域から羨ましがられていますよ(笑)。
市場への出荷のほかに、力を入れていきたいのが地元での販売です。遠藤園芸では、訪れた方へ直接販売もしていますし、すぐ近くにある農畜産物直売所「ゆりの里」にも卸しています。特にポットの花壇苗は、地元の皆さんに手ごろな値段でお花を楽しんでもらいたいという思いで取り組んでいます。また、東京などからわざわざ足を運んでもらえるのもありがたいこと。アクアラインも近いですし、地の利を活かして、「何かやれるぞ」という可能性を感じています。これからも、私自身も仕事を楽しみながら、みなさんに笑顔で喜んでいただけるような花々を届けていきたいです。
取材日 2018年10月27日
interview&text by Okamoto Nozomi
photo by Okada Keizo



