本文
新しく文化財を指定しました
飽富神社奉納太刀 無銘 附太刀拵
32番目となる市指定文化財「飽富神社奉納太刀 無銘 附太刀拵(つけたりたちこしらえ)」が誕生しました。
平安時代末期の太刀
この太刀は飽富神社社務所で見つかり、市へと寄贈されたものです。発見された当時は、全体が錆に覆われていていましたが、刀を研いだところ、美しい刀身(刀の刃がある部分)が露わになりました。
刃身の長さが72.6cmの鎬造り(しのぎつくり)で、元幅に比して先幅が半分ほどまで狭まり、腰元での反りが強く、刀身に対して茎(なかご:柄を差し込む部分)が短いなどの形態から、平安時代末期の12世紀ごろに造られた、市内で最も古い時代の日本刀であることがわかりました。
太刀には銘がなく、誰が造ったものかわかりませんが、大和鍛冶(やまとかじ)の作風の影響が窺えます。
また、太刀と一緒に保管されていた鞘や鍔などの太刀拵(鞘や柄、鍔などの装飾)は、その特徴から南北朝時代から室町時代のものであり、こちらも貴重なものです。
なぜ飽富神社に?
この太刀がどうして飽富神社へと奉納されたのかはわかりません。しかし、飽富神社は、古代に「飫富神社(おうじんじゃ)」と呼ばれ、上総地方の中でも格式の高い神社として記録されています。関東地方で蜂起した平将門の乱の際には、天慶2(939)年に朱雀天皇が勅使を遣わし、飽富神社に乱の鎮定を願い、一本の太刀を奉納した、という伝承があります。太刀が造られたのは平安時代末期なので、時代に合致しませんが、飽富神社に古くから太刀が奉納されていたことを表すのではないでしょうか。
このように、刀として工芸史上貴重であり、歴史資料としても重要であるため、平成27年10月1日、市指定文化財として新たに指定しました。地域の歴史を物語る貴重な文化財として、末永く保存して参ります。